泣き声は夜と共にやって来る

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その時台所から皿の割れる音が聞こえてきた。 突然の事に驚いた俺は、台所に行くのを少し躊躇った。だけど、母親の身に何かあったのかと不安になった俺は台所に恐る恐る向かった。 「大丈夫?」 声を掛けながら、そーっと台所を覗いた。 「大丈夫、お皿落としただけだから。ちょっとあんた掃除機とってきて」 そう言われたので俺は掃除機を取りに行った。 そして、掃除機を持つと台所に向い、コンセントにプラグを差し込むと、自ら掃除機をかけた。 「あんた珍しいわね。自分から掃除機をかけるなんて」 「別に……たまにはいいだろ」 母親は感激していたが、本当は母親の手伝いをしようとかそんな気は更々なく、一緒に居るための口実だった。 俺は時間をかけ丁寧に掃除機をかけていると、丁度夕飯が出来たみたいだった。 出来るの早っ!と思い何か見ると、レトルトのカレーだった。 母親がカレーを持って行くのと同時に掃除機を片付けると、居間に向かった。 母親は机にカレーを二つ並べ、待っていた。俺は椅子に座ると、無言でカレーを食べ始めた。
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