思いは残り霊となる

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夏の早朝。まだ気温は涼しく過ごしやすい。そんな中俺と栄太は、近くの駅で電車を待っていた。 俺は一晩中、音楽を聴き続けていたため一睡もしていない。それに他に何も聞こえないように、大音量で聴いていたため、耳がかなり痛い……。 だけどその作戦が功をそうしたのか、あれから一切泣き声は聞こえなかった。 そして俺たちは朝一で駅に行き、電車を待っているのだ。 まだかなと、プラットフォームから身を乗りだし、電車が来るであろう方向を眺めた。その時、聞こえてきたのは電車が来るというアナウンス。 俺は身を引き、電車を待った。すると、直ぐに電車はやってきて、俺と栄太は乗り込んだ。 揺られること1時間。電車は目的地である駅に到着した。 俺は栄太を起こすと、電車を降りた。 古く、昭和の香りを今なお残し続ける駅。俺たち以外に降りる人はいなく、また乗る人もいなかった。それに、駅から見える町は寂しげで活気がなく、駅の周りにありそうな商店街すらここには無かった。 「なんか雰囲気あるな……」 俺はボソッと言った。 それに答えるように栄太は口を開く。
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