思いは残り霊となる

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「例えば、私と友人がある約束をしたとします。友人はその約束を大変楽しみにしていました。しかし、友人は約束を果たす前に亡くなってしまったのです。身体は骨となりお墓へ、精神は極楽浄土へ行かれたでしょう。しかし、友人の思いは失われてはいません。まだ私の中に、約束を楽しみにしていたという思いが、残っているのです」 駄目だ意味が分からない。このおじいさんに質問すると、余計複雑になる。言っていることは何となく分かるのだが、繋がりがさっぱりわからない。 一旦途切れていた話だったが、数秒の間を置き、再びおじいさんは話を始めた。 「つまりあなたが体験したことは、その場所で失われた命の思いを感じとってしまったのではないでしょうか?例えそれが」 ――――――!! その言葉を聞いた瞬間、何かが頭の中に降りてきた。そして俺はおじいさんの話を遮り、今閃いた自分の考えを一気に吐き出した。 「つまり、霊とは亡くなった人の思いが形となったものなんだ!で、俺はその思いを感じとってしまったんだ。そして、その思いが子捨て谷から憑いてきた!だから家でも泣き声が聴こえてんだ!なるほど、わかったぞ」 突然喋り始めた俺を見て、栄太はキョトンとした顔をしていた。
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