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「無理だ……きっと子捨て谷に行けない。行ったらまた聞こえるって」
弱気な発言をする俺。
「そんなの分からないだろ?二日前に行ったっきり行ってないだろ?それに、日中なら大丈夫だって。俺も一緒に行くしさ」
説得する栄太。
だけどどんな言葉を聞いても、俺の行きたくない。っていう気持ちの方が大きかった。だから俺は再びおじいさんに訊いてみた。
「やっぱり除霊出来ないんですか?」
「はい。私にその様なことはできません」
一瞬の間もなく、おじいさんは言いきった。
更に途切れる事なく俺も言った。
「何でですか?このお寺は沢山の曰く付きのモノを預かってるって、聞いたんですが?」
「思いの込ったモノを、只預かっているだけです」
預かっているだけって……。それを浄めているとか、そんなことは一切していないってことか?……いや、本当に出来ないのだろう。だからこのお寺は只預かって保管しているだけ。
「じゃあ……どうしたらいいんだよ」
顔をうつ向かせ、張りのない声を出した。
「そこに行って、きっちり供養してきて下さい。私が助言できることはそれだけ……。ですが、ひとつ言わせて下さい」
俺は顔を少し上げ、おじいさんの顔を見た。
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