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俺が霊に会いたいのには理由がある。
まぁ、厳密には会いたい訳じゃない。それに今のところ幽霊なんて信じていないのだから。
それは今から四年前に俺が高校の友達数人で、A県で一番有名な心霊スポットに行ったときの話だ。
山奥にある温泉宿の廃虚。あの有名な除霊師が、最寄りの駅を降りた瞬間に、何か異質なモノを感じ、その場所に行かず引き返したという、全国でその名を轟かせた場所だ。
俺達は自転車で片道一時間かけ、山を上り廃虚に辿り着いた。
夕方に出発したのだが、到着したときは既に辺りは薄暗く、あと数分で太陽が完全に沈んでしまいそうな空だった。
漂うは異質な空気。只、恐怖がただの空気をそう思わせているのか、それとも霊の影響で空気がどんよりしているのか分からなかった。
自転車を入口に止め、全員が懐中電灯を片手に持つと、廃虚の入口との睨み合いが始まった。
誰も一歩が踏み出せない。何か見えない結界が張ってあるんじゃないかと思わせるような感じだった。
しかし誰だったか忘れたが、勇気を振り絞り一歩を踏み出した。
「だ……大丈夫だって……ビビりだな……ハハ…ハハハ」
その一言が全員の闘争心に火をつけた。
コイツに負けられない!あのとき全員がそう思っていたはず。
……単純な高校生だったんだな。
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