始まりは終わりを告げる

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暫く走ると見えてきたのは、ボロボロの沢村商店。夜見たときは恐怖を感じたが、今見ると只の廃屋に見えた。 日中だからか、それとも栄太がいるからなのかはわからなかった。 そして、そこから少し進み見えてきた4つの墓。やはりここまで来ると鳥肌がたってきた。 俺たちは原付を墓の側に止めると、エンジンをかけたまま、子捨て谷への入口である、砂利道を眺めていた。 日は傾きかけたとはいえ、まだ夕暮れの赤い光が、辺りを赤く染めていた。 その赤が逆に不気味でもあったが、夜の不気味さに比べたら大したことはない気がした。 「よし、行くか」 エンジン音に掻き消されないように、割りと大きめな声で栄太は言った。 「…………」 だが、答えられない。行きたいのは山々だが、声が出ない。いや……まだ迷っているのだと思う。だから返事が出来ないでいるのだろう。 早く行って恐怖を終わらせたい俺と、ここで見た恐怖から逃げだしたい俺が、今心の中で戦っているのだ。 だけど大方情勢は決まっていて、慰霊碑に行く方が優勢なのだが、最後の抵抗をしている最中なのだ。 俺は深く深呼吸をし、未だ葛藤し続ける心を落ち着かせた。
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