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「ここを左だったよな……?」
「あ……ああ」
「どうした?」
「夜が……来た」
さっきまで木々の隙間から見えていた夕焼けの光。しかし、今は一切見えなくなっていた。太陽は沈み、辺りに光は無くなった。
震えが止まらない。冷や汗が止まらない。鳥肌が治まらない。
栄太は懐中電灯の光を灯し、俺を照らす。
「大…丈夫か?」
口が開かない、声が出ない。だがこれは金縛りではない。おそらく只怖いだけ。俺は助けを求める様な目で栄太を見た。
「早く行こう。このままじゃお前がもたない」
そう言うと、栄太は俺の手を掴み、走り出した。
しかし恐怖で足がすくみ、中々上手いこと走れない俺。栄太は転ばないようバランスを取りながらゆっくり走った。
しかし、簡単には前に進めなかった。
「オギャア、オギャア」
聞こえた!!
奴が来た!!
「ヤバい!ヤバいって!」
今にも泣き出しそうな俺。足がもう動かない。まるで手で掴まれている、そんな感覚が両足を襲う。
そして、足が動かなくなった俺はなす術もなく、転んでしまう。
それでも栄太は手を引っ張り、前に進もうとする。
―――どうしちまったんだ……栄太?
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