第一章

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   上手く行った。狸は雑木林を歩きながらほくそ笑む。  「たまーに休みも必要なんじゃ。まったく。いくらワシでも、同じ事をやっておったら疲れてしまうわい。さーて………何処かでお茶でも買ってさぼるか。」  狸が雑木林の中にある余り人の来ない東屋に、自動販売機で買ったお茶を持って向かうと、珍しく先客が居た。  ………結構寒くなって来ておるのに、物好きがおるのー……。  狸は気が付かれない様にその東屋に近づく。  狸が隙間から覗いてみると、その先客は白い息を吐きながらも、何処か嬉しそうに、本を読んでいた。  少し長めの髪の毛を襟足の辺りで結び、前髪が邪魔なのか、定期的に掻き上げながら文字をなぞる姿は、とても姿勢が良く、凛としている。  ………ふむ。近頃の若者には珍しく振る舞いが良い。しかも……珍しいのはあの髪の毛と目の色じゃ。栗毛色に琥珀の瞳。琥珀と行っても少し色の濃い、上品な色じゃな。 「……クシュッ……!」  覗いて観察していたら、その人物は小さなくしゃみをした。  …………まあ、あのような薄着ででは寒いだろうな。  狸はその人物の隣に滑り込む。  「……?」  突然現れた小動物に、その人物は驚いていたが、無言で狸の頭を撫でた。  狸が優しい撫で方に目を細めていたが、目的を果たす為、ピョン!と肩に飛び乗ると、首の周りに自分の身体を巻き付ける。  「………温かい……。」  狸にも聞こえるか聞こえ無いかの小さな声で呟くと、もう一度狸の頭を撫でた。  「……有り難う。狸さん。」  どういたしまして。狸は返事の代わりに、その人物の頬をペロリと舐める。相手はくすぐったそうにしていたが、再び本に集中し始める。  …………ふむふむ。表情は乏しいが、顔は結構整っておるの。おや?よくよく見ると、額に薄らと傷後があるの。どうかしたんじゃろうか?  狸が観察していると、背後に気配を感じた。  「天狗様。あんた何してんですか?ウチの子達と薬嗣、心配してますよ。」  「!!!!」  見つかった狸よりも、一緒に居る人物が、真っ青になるのを、煉は見逃さなかった。
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