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…………。あれは。
桔梗は生徒会室の窓辺で、本日のおやつを頬張り、雑木林から走って来た人物を見ていた。
「………桔梗。その重箱の中身って……。」
千幸はおそるおそる聞いてみる。嫌や予感はしたが、怖いもの見たさの好奇心が勝ってしまったのだ。
「一段目、重箱ケーキ。二段目、重箱おはぎだな。食うか?」
差し出された重箱を覗くと、重箱一面のフルーツケーキと、これまた一面のおはぎがみっちりと詰まっていた。
「蓮華になら少しやろう。律にもちょっぴりならやるぞ。」
「…………館長さん大変だよな。」
千幸はスプーンで少しだけおはぎを掬い、口に入れた。餡子の甘さも餅米の固さも絶妙で、思わず顔が綻ぶ。
「………桔梗兄。窓の外に誰か居ましたか?」
大好きな二人が並んでおやつを食べている風景に、ほんわりしながらも、窓から目を外さない桔梗を見過ごせなかった。
「いや。恥ずかしがりやの小犬が一匹。雑木林から出てきただけだ。」
「恥ずかしがりやの小犬ですか?」
律は言われた意味が分からず首を傾げる。
「小犬には、地獄の番犬と言うか、破壊神が付いている筈なんだがな。」
「………普通……小犬に番犬は居ないと思うけどな。質問して良い話しか?桔梗。」
桔梗は箸で器用にケーキを一口大の大きさに切り、千幸の口に放り込む。
「良いも悪いも……。そうだな。たまにはあの腹黒狸をギャフンと言わせてやろうか。」
この男には珍しく、意地の悪い笑みを浮かべると、律を手招きし、何やらヒソヒソと話し始めた。
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