第二章

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   「ぎゃふん。………何で英坊が、革命軍のリーダーなんじゃいっっ!」  「何でって言われても。簡単に言うと、夏神探索の旅で革命起こしちゃった。みたいな?」  煉はへロリと笑うが、その目が笑っていない事に、狸は気が付いた。  「………詳しく話せ。」  一瞬にして水を打った様に事務室は静かになる。それを見計らったのか、煉も真面目な顔で語り始めた。  「そもそも、夏神が人間界で行方知らずになった所から始まります。ソレイユ王国は、夏神が人間として産まれる為に選ばれた場所でした。両親は国王夫妻。他の四季神と同じく、本来なら、子供が出来ない筈の夫婦でした。まあ、選ぶ基準は天狗様の方が知っていると思いますので省きますが、とにかくこの国王夫妻の子供として夏神は産まれました。英は兄二人と違い、天界で夏神の不在を護ると決めていたので、夏神の事を気にしつつ、留守番をしていたんですよ。神官長は何処に居ても自分の神を見失う事はありませんから。しかし、ある日突然、夏神の気配がしなくなったそうです。急いで三帝に確かめに行くと、三帝も気配が消えた事を知って、英に探しに行く様に命令が下りました。これがこちらの世界で、約20年前の事です。」  それだけ聞くと狸は髭を揺らし、口を開いた。  「20年……?随分と経過しておるの。その間、英坊は何しとったんじゃ?」  「何も。………天狗様。俺達四皇神や貴方一族ならともかく、天界に所属する者がそのままの器で来れる訳ないでしょ?その為の何も出来なかった時間ですよ。」  煉は皮肉げに笑う。煉は何も出来ない時間を、英がどういう気持ちでいたのか、それを思うと不憫でならない。1分1秒でも早く、自分の神を探しに行きたかっただろう。  「………別に貴方の事を責めてる訳じゃありませんがね。……そうして準備が整い、英が此方に来ました。それが約1年前。後はだいたい想像つくでしょう?」  「ああ。」  自分の神が産まれた筈の国へ行き、本来あるべき姿の国が無く、英は自分の神が戻った時、あるべき姿で受け入れてもらう為に、行動を起こした。  「………やれやれ。弟子は何時の間にか師匠を越えて行くな。」  狸は嬉しそうに、そして何処か寂しげに笑みを溢した。
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