第二章

7/16
前へ
/53ページ
次へ
   「おいおい、秘書のにーちゃん薬嗣の『好き』にいちいち反応するなよ。良いか。こいつの好きは、可愛い子犬を見て好きと同じだっ!!」  クワッと目を開き、断言する。その言葉に何故かショックを受ける宗。  「…………私が……可愛い子犬と一緒………?!」  ガックリと膝を落とす。  「………おい。俺に怒られた腹いせに宗で憂さ晴らしするなよ。」  薬嗣はボソボソと耳打ちする。その言葉を受けた八朔は、チラリと皮肉な視線を送り返した。  「お前が『お前に対する好きは特別』って言ってやれば良いんじゃねえの?」  真っ赤になって慌てふためく薬嗣を尻目に窓を開けた。  「そう言えば早急、爆発音しなかったか?…………………て、事務室から煙が上がってるっ?!」  「え?まさかー。まだ、俺の事からかうつもりかよ。今日は煉が出勤してきてるのに………っって、ええっっ?!」  薬嗣は冗談かと思い、笑いながら下を覗くと間違いなく、モウモウと煙が上がっていた。  「宗っっ!!事務室、火事っっ!!」  うなだれていた宗が顔を上げる。が、全く焦る様子が無い。それどころか……。  「放っておきなさい。」  と冷たく言い放った。  「………あの……秘書君?怒ってる?」  何時も(表面上は)にこやかな宗とは違う態度に、八朔は戸惑う。  「宗?何で急に不機嫌になってんだよ。」  「お祖父様は無事ですよ。…………この爆破、多分、弟の英がやったんです。先程から殺気を放ってますから。」  「へえ~……………。ちょっと待て。爆破と殺気って。お前の弟何者っっ?!」  薬嗣の問いに、今迄見たことが無いぐらい、変な顔をする宗。色男、台無しだ。  「何者と言いますか………。ちょっと過激な面がありまして……。まあ、目的の為なら手段を選ばないだけなんですけどね。」  「手段を選ばないと爆破。何だ。秘書のにーちゃんの弟なだけはあるな。」  八朔はそれだけ言うと、さっさと教授室から出て行った。
/53ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1000人が本棚に入れています
本棚に追加