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薬嗣がガミガミと狸と煉に突っ掛かっていると、英はクスクスと笑った。
「薬嗣様は本当にお変わりがない。」
「ふーん。随分態度違うじゃねえか。」
「そうですね。心から尊敬できる相手にはそれなりの礼を払うべきでしょう?………初対面の貴方は、どう言う人か判らないですか。」
英は八朔に再び威嚇し始めるが、八朔は全く気にしていなかった。
「ま、そりゃそうか。一つ忠告しておいてやる。相手が判らない場合、威嚇は有効手段とは限らない。藪を突いて蛇を出す。余計な事して敵作る場合もあるからな。もう少し状況判断してから態度を表せ。」
言っている事は嫌味だが、全くそれを感じさせない八朔に、英は驚いた。
「………変わった御人だ。御名前をお伺いしても?」
「あ?そう言えば名前名乗って無かったか?月草八朔。この学校の元図書館館長で、現民俗学部事務長。薬嗣の悪友で、道摩の親友。宜しくな。」
「!貴方がでしたか!父上が『鬼の図書館館長』と言って何時も頭が上がらないと言ってました。」
鬼の図書館館長。それを聞いた全員が一斉に涼を見た。今迄様子を傍観していた涼は困った顔で頭を掻く。
「………予算会議の月草元図書館館長は本当に鬼でしたよ?私、襟首掴まれて何度も殺されかけましたから。」
「当たり前だ。こちとら書物管理だけじゃなく、学園に関するあらゆる公文書も管理してんだよ。セキュリティにしろ、設備にしろ、あれだけの予算で出来るかっつーの。」
はっ。と鼻で笑う八朔。どうやら殺しかけたのは否定しないらしい。
「………ね?鬼でしょう?」
「鬼じゃ。」
「鬼っスね。」
「殺して頂いてもよろしかったのに……。」
最後の台詞は言わずとしれた宗だった。その会話を聞いて、余計笑みがこぼれてしまう英。
「………これは本当に失礼致しました。八朔様。私の事は英と、お呼びください。宗兄上の末弟です。お話しから推測させて頂きますと、彼方の世界の事柄もご存知ですよね?私は彼方の世界……否。どの世界でも唯一無二の主である夏神に仕える神官長です。以後お見知りおきを……。」
英は、一礼をすると、八朔の手を取ると、その甲に口付けを落とした。
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