第二章

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   「一応、視察の名目もありますので、王国へ降り立った足で、直ぐに王宮へ向かいました。一目見て『この地には我が主は居ない』と確信した私は、情報収集の為暫し王宮に滞在させてもらい、行方知れずの正統後継者を知っている人間を捜し当て、当日の事を聞き出す事に成功しました。それが、今、我が主の帰りを心待ちにしている、ソレイユ王国で主の教育係であった執事殿でした。執事殿の話しでは二十年程前に『海に絵を描きに行くだけだから、一人で行ってくる。爺やは後でお弁当を持ってきてほしい。』と言われ、当時は治安も安定していたので言われた通りにしたそうです。勿論、王族以外は出入りは出来ない場所ですし、王宮とは本当に目と鼻の先だったと言う事もあり、執事殿は油断した……と言っておりました。言われた通り、お弁当を届けに行った時には、主が持って行った画材道具が浜辺に散乱し、主の姿は何処にも見当たらなかった様です。勿論、早急に王宮に帰り、捜索隊を編成させ、約一ヶ月にも及ぶ捜索を行ったそうですが、見つかったのはビーチの近くにある林の中から数本の色鉛筆のみ。後はその林の先にあった岸壁の先端から、主の血液らしき物が数ヶ所点在していたと言う結果だけが執事殿に持ち込まれた結果でした。…………そうして王宮では『次代は何物かに殺害』と結論付けられ、主の後継に当たっていた王妃が失意の内に病で死亡。王族の中で継承権を持っていたのは、先日倒された先王の姉の能無しの息子のみ。やもうえず、その馬鹿放蕩息子が国王の座に。勿論、少しでも智のある者なら『国王の座欲しさに、次代を殺害したのは馬鹿息子と欲塗れの母親』とわかっていたので、主の御両親を慕っていた家臣達は王宮を去りあるものは、静粛されて行きました。執事殿だけは主が何時か帰って来た時の為、じっと耐えていたみたいです。ま、最も、執事殿がいなければ、あの王国、一ヶ月も保たないで、他国に侵略されていたでしょうね。馬鹿親子は執事殿だけは手出し出来なかったようですし。……後の事はネットでも調べられますよ。」 爽やかに笑うと英は、冷蔵庫から勝手にミネラルウオーターを取り出すと、美味しそうに飲み干した。
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