第三章

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   「あ。メール。」  薬嗣の携帯の着信音が部屋に響いた。  「……………必殺仕事人のテーマって……。」  「聴き取りやすいだろ。あれ?珍しい。政君からだ。」  「政?」  聞いた事の無い名前の出現に、煉は眉を潜めた。民俗学棟の事務員ではあるが、狸から言われた事もあり、薬嗣のことをコッソリ(ばれたら本人と孫が五月蝿い)と守っている身としては、交友関係が気になる。しかも、部屋の片付けも終わる頃、狸がメールのやり取りをした後、さっさと帰ってしまった。帰りぎわの言葉が『必ず薬嗣達と一緒に帰って来い。』だった。はっきり言って、呪い以外の何物でも無い。そんな訳で、『政』と言う人物が、どんな相手か聞き出そうとしたら、先に宗が動いた。  「教授、私が初めて聞く名前ですが。いったいどのような方で?」  「どのような方って……。この街で唯一の神社の宮司さん。」  「宮司……?」  「そう。この学園の高等部に在席してる。最近知ったけど、千幸君と桔梗君と入学当初から仲良いんだって。」    ………強者。     薬嗣の話しを聞いて、『政』と言う人物の印象が、煉と宗に埋め付けられた。桔梗はあの性格だし、千幸も最近迄は、人との接触を断ってきた。一時、暮らしていた煉でさえ、無理矢理自分のペースに巻き込まない限りは、ある程度の距離を置いていたのだ。  その二人と入学当初から仲が良いとは……。  「そう言えば、冬神も秋神もこの学園にいらっしゃいましたね。」 何故か、一人優雅に紅茶を飲んでいた英が、話しに加わる。  「春神の薬嗣様もいらっしゃる。法皇の兄上もいらっしゃる。四皇神のお祖父様、お祖母様。…………後、老師とくれば……。彼方の世界、機能してるんですかね?これで我が神がいらっしゃれば、まるでこちらが天界のようだ。」  「奇人変人ビックリショウだな。」  「そうですね。」  三人で気楽に笑うが、その事の重大さに気が付いている煉は、笑うに笑え無かった。   
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