第三章

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   『政君。今からこっちに来れる?今度、政君の家にお邪魔させて頂きたいので、話しをしたいです。』     「……だってさ。直接電話してくれたら良いのに。変なの。」  ………多分、政の存在を知った宗が、直接会いたいと言い出したのだろう。桔梗と千幸は確信した。  「薬嗣さんは……律儀な人だから……。」  蛍は怖ず怖ずと、言った。事情を知らない蛍にしてみると『薬嗣は、律儀なので、きちんと向き合って話しをしたかったのでは?』と言いたかったのだろう。その気持ちを汲み取って、政は、そうだね。と頷いた  「流石は教授。人の世の在り方を解っておるな。褒めて遣わす。」  「何様だお前。どうすんの?鍋。」  政はウーンと唸り、答えを出した。  「先に連絡来たの、家からだから、やっぱ帰る。翠樹教授には電話して謝るよ。」  政は、薬嗣へ電話をかけた。数回のコール後に、薬嗣が出る。  『今日は。さっきは面白いメール有り難うな。』  「いえいえ。それでね、教授。俺、今日は先客があって、家に帰らないと駄目なんだ。明日なら駄目かな?」  『ああ。御免なー。こっちが急にお願いした事だから、政君の都合の良い日で構わないよ。明日で良いの?』  「はい。明日なら大丈夫です。」  『了解。有り難うな!因みに、政君の所に行ったら又、『刀舞(とうぶ)』見せて貰える?』  「勿論。美人さんにお願いされたら断れ無いですよー。」  二人で同時に笑い声を上げると、薬嗣の携帯から違う声が聞こえた。  『もしもし。お話し中申し訳無い。俺は……。』  「桔梗から知らないおじちゃんと、話ししちゃ駄目って言われてるのー。」  それだけ言うと、政は携帯を切った。  「よし。断りの電話完了。」  一仕事を終えたかの様に、政は汗を拭うふりをした。  「珍しい。何かあったのか?」  普段、おちゃらけてはいるが、礼儀は弁えている政なのに、あんな風に電話を切るのは珍しい。  「ん―?初対面の相手に、探りを入れようとする根性が気に喰わん。ありゃ、俺と同じ玄人だな。」  どこから取り出したのか、塩を振りまく政を見て、驚く三人だった。
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