第三章

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   ………この気配。  政は、後ろを振り返り、次に桔梗の顔を見た。  「お前の親戚だ。」  真面目くさった顔で、何故か偉そうに意味不明な事を伝える政を見て、桔梗は本気で殴り飛ばしそうになった。  「すんげー眉間のシワ。何処からか変な気配と言うか、俺に対する意識を感じちゃってさ。………何となく桔梗と同じ系列な感じがしたワケ。でもよ。なーんかさっきの電話に出た男とも似た感じなんだよな。」  桔梗は目を見開く。………これで俺達の関係者じゃないと言うから驚きだ。似た感じと言うのは恐らく宗の事。政の正体が知りたくなった煉が、焚き付けたのであろう。勘が良いと言うだけでは片付けられない能力と、纏っている清浄な気。そして何故か神に好かれる体質。  …………どうも、何処かの誰かを彷彿させる。  桔梗の頭には、天敵とも言える狸が頭に浮かんだ。  「…………何だよ。本気で怒った?気を悪くしたら謝る!」  パンッ!と両手を合わせて謝る政を見て、桔梗は思い直した。  「お前はアレと違うか。」  あの狸なら『こーんな事でご立腹とは、ちっちゃい男じゃのー。八朔。こんな男は止めておけ。』と言って、尻でも振るだろう。  桔梗はその様子を想像して、もっと深いシワを眉間に寄せる。  「うおっっ!何かもっと怒っちゃったんですけどっっ!!助けて!千幸に蛍ちゃん!てか、俺、帰るっっ!」  慌てる政を桔梗は止めた。  「怒っている訳ではない。………蓮華。悪いが俺は二人を送って行く。お前はどうする?」  「え?俺?んー……。一応教授に連絡して、用事が無いなら俺も帰ろうかな?今、文化祭の衣装の準備でたぬ……じゃなくて、宗さんとか忙しいだろうし。」  「あれ?でも狸の妖精に会いに行くんじゃなかったの?」  桔梗は空に目を向ける。  「…………狸の妖精はどうやら居ない様だ。明日でも良いだろ。」  一応蛍に確かめようと蛍を見ると、蛍は小さく頷いた。  「ふーん。じゃあ久々に手を繋いで仲良く帰ろう!」  「自分の右手と左手でも繋いでおけ。」  桔梗は冷ややかに言い放った。
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