第三章

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   「もしもーし。」  薬嗣は携帯を開いた。……今日は又、随分携帯が活躍する日だな。  『教授?千幸です。』  「うん。その低音は政君だよね。」  『…………突然声変わりしたユッキーです。』  「ははは。大丈夫。変な事しないように言ってあるから。」  『ええと。その割には翠樹教授の携帯通して、殺気を感じますが。』  まさか。と、思いつつ、宗を見ると、笑顔で黒いオーラを放っていた。  薬嗣はその様子を見て、ニッコリと笑顔になり、親指をビシッと下に立てた。  「え?誰も居ないよ。」  その一言で、宗は撃沈。………薬嗣も段々と本領発揮してきたなー。どうやら順調に記憶が戻ってきているらしい。  煉は薬嗣に話しをする様に促した。  「今度は政君から用事かな?」  『はい。俺と言うより、千幸と桔梗がね。二人とも俺と離れたくないらしくて―。一緒に帰るから翠樹教授のバイト、サボるそうです。』  政の背後から抗議の声ガ聞こえる。多分、蛍を送って行くつもりなんだろう。体調はそんなに悪くはなさそうだが、蛍は一人暮らしなので、誰かが側に付いていた方が良いだろうな。薬嗣はそう判断して、了承する事にした。  「政君。悪いけどお願いするよ。蛍ちゃんって一人暮らしなんだ。ちょっと心配だからさ、蛍ちゃんさえ良かったら、俺の家で暫く休んでと、言ってくれないかな?俺の家なら千幸君も一緒に居てもらえるし。」  『ラジャーです。そう言えば、翠樹教授と月草元館長と海樹先生って、灯名誉教授のお弟子さんでしたよね。勝手知ったる何とかでしたか。では、特別サービスに、桔梗も付けちゃいます。』  「うん。頼むよ。有り難う。」  薬嗣がお礼を言うと、何故か政は黙り込んだ。  「?政君?」  『翠樹教授。………ウチの神社に来るの、大分後になりそうですなー。来る時は、聞き耳立ててる、プロの方と秘書さんと、……もう1人いらっしゃる御方も連れて来てくださいねー。』  「うん?」  じゃあ、又!と、爽やかに言い残すと、携帯が切れた。  「…誰が居るかばれてたみたいだ。」  「おや。本当に凄い人ですね。」  英も薬嗣も呑気に笑っていたが、煉も宗も心中穏やかでは無かった。
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