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「しかし……。老師は白狸村の蛇を見張っていたので、動けなかったのでは?」
孫の狸を庇う言動に、煉は微笑ましく思った。
………何だかんだでスレて無いんだよなーウチの孫達。その辺りは育ての親に感謝だな。
「悪いけどね。俺はその話し、信用出来ない。と言いますか。……聞いた時、有り得ないと思った。」
「しかし……実際に私はその場に。」
「その場?居たのは蛇の最後だろ?見張ってた五百年、一緒に居た訳じゃないよな。………あの程度の神。俺なら一瞬で消せる。許可があればな。」
煉は手のひらに炎を灯す。煉の炎は一切を灰塵と化す。煉獄の炎だ。
「……………では……。老師は私や教授を騙していたと……?」
宗は、悲しそうな目を煉に向ける。その瞳を受けて、煉は炎を消した。
「違うな。あの御狸様の場合、お前等を騙す事はしないよ。多分さ、言えない理由があった。だから誤魔化したと言うのが正しい。冗談を言っても嘘は言わない。言わない時は言えない時。…………お前等が思ってる以上にあの御狸様は、重いモノを背負ってるんだ。」
そして誰よりも何よりも優しい神。俺はそれを知ってしまった。だからこそ、あの神と同じモノを背負う覚悟だ。
「お祖父様。」
「ん?」
「私は幼い頃から、老師に色々騙されてます。からかわれてますし、嘘も吐かれました。」
……………。嫌な沈黙。………信用ねえなーあの御狸様。
「宗。」
「はい。」
「そーゆー態度取るから余計弄られるんだよ。ホント可愛い孫だなー。で、ちっとは薬嗣と進展したの?」
「可愛いって何ですかっっ!教授と同じ様な事言わないで下さいっっ!」
秘書の空しい叫びが、廊下に響き渡った。
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