第三章

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   「御馳走さまでした。」  パンッ!と両手をあわせて頭を下げる泉。食べ終わるのを待っていたランは口を開いた。  「貴方が我が主人を預かっているとは思いませんでした。英様が『日本の探偵事務所に定額送金履歴がある』と仰った時、まさかとは思いましたが。」  「敵を欺くにはまず味方からってね。ま、あの子が行方不明になった時、君達以外は積極的に捜索しない事は判ってたからね。………君が言ったでしょ?『安全な場所で育ててください』てね。僕の手元以上に安全な場所は思い浮かばなくてね。当時の理事長も協力してくれたし。妹も喜んでくれたし。一石二鳥って事だねぇ。………良い同級生持ったね?」  人懐っこい笑みを浮かべる泉に対して、ランは無表情に答えた。  「いまだに理解出来ない事があります。何故、貴方は私に協力してくれたのですか?あの方身内から狙われ、あのままだと王位を継承出来る年齢迄、殺され兼ねない状況にあった。そんな厄介事を貴方が引き受ける目的がいまだに解らない。」  「好きな相手に頼まれて、断る男は居ないよ。」  ランの手を取り、口付けをする。チラリとランを見ると、相変わらず無表情のままだった。  「…………こっちにも色々理由がある。今迄、あの子を守ってきた礼と思うなら追及はしないで欲しい。」  今迄浮かべていた笑みを閉じ込め、真剣な瞳でランを見る。ランはその顔を見て、やれやれと溜め息を吐いた。  「貴方は、本当に不思議な人ですね。」  「ランちゃんの方が不思議じゃん。知ってるよー。あの馬鹿王達が、ランちゃんにだけは手出しできなかった理由!『ソレイユ王国の執事に手を出すと、災いが訪れる』だったよねー。嘘のような本当の話しだから、怖い怖い。」  「それ、貴方が遊びに来た時に広げた噂でしょう。良い迷惑です。」  「だって、ランちゃん虐められたら可哀想だなーて、思ったんだもーん!」  1人ケタケタと笑う泉を見て、もう一度、深い溜め息を吐くランだった。
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