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煉が笑っていると、突然叫び声が聞こえた。
「ワシはもう嫌じゃああああっっっっ!!」
「……………何だ?」
「お祖父様。錯覚でしょうか?今老師が落ちてきた様な。」
「師匠!!!」
涼が慌てて事務所の窓を開けると、狸が走り去るところだった。
「待ちやがれっっ!」
「みかんっ!危ないって!」
上が騒がしいので、見上げると、薬嗣が窓から乗り出す八朔を、必死に取り押さえている。
「みかんちゃん。何、してんの?天狗様、えらい勢いで走って行ったけど?」
「アイツ!逃げやがった!」
逃げるって………。何やらかしたんだか。
「薬嗣ー。どうした?」
煉が落ち着いた声で話し掛けると、薬嗣が顔を出した。
「それが……。みかんがさ、文化祭で使う衣装をもう一人分増やせって……。」
その言葉で全てを理解した煉は、自分が探しに行くと伝えて、窓を閉めた。
「下に人が居なくて良かったな。宗。お前は薬嗣の所に戻れ。涼。天狗様探してくるまで事務所、頼んでも良いか?」
「良いですが………私……いえ、俺が探しに行きましょうか?」
「やさぐれた天狗様の相手は君にはまだ、ちょっと無理だな。逃げないから此処に居てよ。」
煉は宗と涼の頭をポンポンと叩くと、コートとマフラーを羽織る。
「外は大分寒くなってきてるからね。早く連れ戻さないと、暖を取ろうとする心無い人に、狸汁にされるかもしれない。と、言う訳で、行ってきまーす。」
軽やかに煉は事務所を出て行った。残された、宗と涼は一瞬、目を合わせたが、結局無言のまま、言われた通りに行動を起こす事にした。
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