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店を出ると賑わう夜の街に身を委ねた。
何だか今日は帰りたくない。
一人になりたくない。
あたしはさ迷う様に夜の街を歩き出した。
「お姉さん♪今帰り?」
直ぐに声をかけられた。
見た感じ、確実にホスト。
いつもは無視して歩くけど今日は素直に足を止めた。
「ってか!ってか!ENVIの鳳蘭さんじゃね?」
『…そうだけど?』
「うっわ!よっしゃ~っ!!」
そのホストは嬉しそうに笑ってガッツポーズした。
……変な子。
その姿にクスッと笑ってしまった
「俺!俺!超ファンなの!とりあえず握手して!」
手をスーツの裾で何度も拭いて差し出してきた。
首を傾げた後、一応握手してあげた。
『君、名前は?』
「そうだった!(汗)俺ってばホストなのに名刺きってなかった!」
慌てて名刺を出す。
『玉袋☆一星………。』
玉袋って…。
「駄目だよ!蘭さんが玉袋とか言ったら!俺の姫なんだから!」
『もう姫じゃないよ。来月で25だし。四捨五入すれば三十路入り(笑)』
「んな事絶対ねぇって!」
一星のリアクションに少しだけ刺々しかった自分が和らいだ気がした。
『こんな時間なのにキャッチ中なの?』
「いや今スッゲー飲ませる客が来ててちょっと酔いざましに外出てきたんだ。マジ超ラッキーだった!今日ばっかりはアイツに感謝しなきゃ(笑)!」
『…上がってあげよっか?』
いつもはそんな事言わないのだけれど。
一星はまたあたしの前で飛び上がって喜んだ。
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