~Poison Rock'n'roll~

1/10
前へ
/247ページ
次へ

~Poison Rock'n'roll~

 様々な人が慌ただしく行き来する船着き場、海と見間違えそうな大河を下る船や遡る船がいくつも留まっているが、どの船にも帆がついていない。  停泊しているほとんどの船から木や鉄でできた箱に詰められた荷物の積み降ろし作業が進められている。 「お嬢さん、船旅の前に一つ占いでも如何でしょう?」  一際大きな山羊の紋章が入った木造船の脇で、くすんだら茶色い布で小さな体をすっぽり覆った占い師が小さな椅子に座って客引きをしているらしい。  呼び止められた背中と胸元の大きく開いた赤いドレスを着た女性は立ち止まり、癖のある金髪を揺らして占い師に近づいていく。  彼女の自信に満ちた表情や、立ち振舞いから察するにかなり地位の高い存在であるように思われる。
/247ページ

最初のコメントを投稿しよう!

751人が本棚に入れています
本棚に追加