~Poison Rock'n'roll~

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 占い師が商売道具の白い砂を机の上に広げたところで顔の下半分を黒い布で覆った男が物珍しそうに机を覗き込んだ。 「占い師の言うことを全て信じるべきではない、この手の占いは運命を手繰り寄せる為のアドバイスに過ぎず、端(はな)から手繰り寄せる意思がなければなんの意味も持たない……なんてね」  男は明らかにサイズが合っていないこれまた黒く、大量のポケットがある上着を羽織っており、ドレスの女性の後ろから声を掛けるとゆっくり歩いて船に乗り込んだ。  女性と占い師だけでなく、様子を見ていただけの人々が呆気にとられていると若い船員が出発を知らせる鐘を鳴らし、女性が占い師に目もくれずに走っていく。  そして占い師も砂を継ぎはぎだらけの革袋に入れると被っていた布を剥ぎ取り、船に乗り込もうとチケットを片手に飛び出した。
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