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「お兄さん、早く行こっ」
櫻乃が呼んでいる。
今から僕と妹の櫻乃は、櫻乃の病気を治すためにある親戚の家に行こうとしている。
その親戚は自分の家で病院をやっていて、噂によると名医らしく、櫻乃を見てくれるという。
だが、櫻乃は不死の病らしく、どの病院に行っても詳しく見てくれない。
だからあとはこの親戚の人にしか頼るしかないのだ。
櫻乃は…余命一週間しかないのだから……。
電車で2時間ほどして、親戚の家に着いた。
「こんにちは」
僕と櫻乃は礼をした。
「よく来たね、さぁどうぞあがってくれ」
そう言われて中に入った。
年は30歳くらいの男の人で、とても優しそうな人だ。ひとりでこの家で暮らしてるらしい。
そして診察室に入って櫻乃を見てもらった。
「確かにこの病気は厄介かもしれないけど、大丈夫、きっと治るよ」
そう言われた。
「本当ですか!?」
僕は言った。
「そのためには薬を作らないとね。それまで櫻乃ちゃんたちはゆっくりしていくといい」
「はい!」
櫻乃と僕は返事をした。これで櫻乃が治る…
やっぱり来てよかった。僕はそう思った。
二日目の朝、
「お兄さん、私散歩したい。」
そう言われ僕たちは家の周りを散歩することになった。
辺りは結構田舎で、特に何も無かった。
それでも、櫻乃は楽しそうに話してくる。
本当に余命一週間なのか…?
しばしばそう思うようになった。
30分ほどして家に戻った。
昼ご飯のあと、
「櫻乃ちゃんはこれを飲んでね」
…と薬を渡された。
薬草から作った特別なお茶のような飲み物。
櫻乃はそれを飲んだ。すると……、
「うぇ~、苦いぃ」
櫻乃は嫌々言っている。
「ちゃんと飲まないと良くならないよ?」
先生にそう言われしぶしぶ全部飲み干した。
「毎日朝昼晩、食後にね。」
「うぅ~~。」
ガンバれ。
僕はそう思った。
三日目の朝、
僕たちはまた散歩に出かけた。
今度は違う道を歩いた。すると、目の前に桜が数本あった。
「うわぁ~!」
櫻乃は嬉しそうにそれを見ている。
「でもまだ満開じゃないな…もう少ししてからかな」
僕は言った。
「桜が満開になったらまた来ようね!」
櫻乃に言われ、
「あぁそうだな、約束な」
「うん!」
楽しみがひとつ増えた感じだった。
そしてその日も苦い薬を櫻乃は飲み、笑いながら食事をし、笑いながらいろんな話をする………。
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