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寝たきりで、出来ることは僕と一緒にいることだけ……。
「お…兄さん…」
「大丈夫、ここにいるよ」
「ふふ…ありがとう…」
「礼を言われることじゃないだろ」
「ううん…それでも…ありがとう」
櫻乃の命はあとわずか……僕は見ていられなかった。それでも櫻乃は僕と一緒にいたいと言ってくれる。
少ししてから僕は先生に呼び出された。
「おそらく…明日の日の出くらいまでかと……」
「……はい、」
もう何もすることが出来ない。
櫻乃は死ぬ……
もう何もかもがどうでもいい気持ちだった。
七日目………
本当に余命一週間だったんだな…。
心の中で呟く。
すると櫻乃が、
「お兄さん…桜…見に行きたい…たぶんもう満開だよ…」
「あっ…」
そのことを忘れていた。
つくづく僕は最低だな……
「うん、行こう。満開の桜を見に…。」
「うん」
櫻乃は笑顔だった。
歩けない櫻乃をおぶって桜の木の公園まで来た。
辺り一面桜の木。
確かに満開になっていた。とても美しく、桜の花びらが散っている。
櫻乃はおんぶをされた状態で僕に言った。
「綺麗…だね」
「あぁ」
「ずっと…見ていたいよ…」
「僕もだよ…」
「…」
「櫻乃?」
「ゴメンね…」
「謝るなよ」
「本当に…ゴメンなさい……」
そして櫻乃を降ろし、桜の木の下で二人寄り添う。
「本当に…綺麗だな」
「ねぇ、お兄さん…私、今とっても…幸せだよ……」
「…そんなこと言わないでくれよ」
すると日の出があがってきた。
僕と櫻乃を照らしているようで、とても眩しかった。
「ありがとう…お兄さん……」
そして、…櫻乃は静かに目を閉じた。
……
「櫻乃……お前に今まで恥ずかしくて言えなかったことがあるんだ…」
「………」
櫻乃は答えない。
「好きだよ…櫻乃……」
…………
-終わり-
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