199人が本棚に入れています
本棚に追加
待ち合わせ場所のカフェには、予定通りスザクとスザクの彼女が向かいあって座っていた。
ガラス越しにスザクが俺に気付き、軽く手を振る。
彼女は俺を見やると、手中にあるハンカチをぐっと握りしめた。
「ごめん、遅くなった」
「うん、大丈夫。で…さ」
俺がスザクの隣に座ると、スザクは緊張した面持ちで彼女に向き直る。
「こいつが、さっき話したアクロ。俺…ずっと君を騙してた。…本当は、男しか愛せない。いや、男じゃないと感じないんだ。もちろん、君のことは愛してたし、今だって大好きだ。…だから、君を傷つけてしまう自分が…情けない…」
スザクは淡々とした口調で言ったが、最後の情けないだけ声を震わせた。
本当、いつ見ても迫真の演技。
「そんなこと言って…ただ、私と別れたいだけなんでしょう?下手な小細工なんかしないでよ」
お嬢さん、鋭い。
だけどそれは想定の範囲内。
スザクは悲しげに顔を歪ませて唇を噛む。
そして、俺の肩に腕を回した。
きたきた。
俺は内心ほくそ笑み、戸惑ったような視線を浮かべ、頬を赤らめる。
そして、スザクの左手が俺の顎を捕らえ、次の瞬間には唇と唇が触れ合っていた。
最初のコメントを投稿しよう!