アクロの恋

8/8
前へ
/341ページ
次へ
「アクロ?どうした。冷めるぞ」 まったく、高校時代は成績優秀、眉目秀麗で『王子』なんて呼ばれてたのに。 いつからこんなに女ったらしになったんだ。 俺は呆れと切なさとが入り交じった不思議な心地で、タバスコに手を伸ばすスザクを見つめる。 「おい、それは旨いのか?」 タバスコのせいで真っ赤に染まったハンバーグはどう見ても旨そうには見えない。 「まぁまぁ?」 この、偏食家が。 スザクは残酷だ。 俺に。この俺に、恋人の『フリ』をさせるのだから。 いくら、俺がゲイでスザクを好きだってことを知らないとはいえ。 まぁ、快諾してしまう俺に問題があるのはわかる。 だけど、しょうがないじゃないか。 目の前に餌をちらつかせられたら、腹を減らした俺は飛び付いてしまう。 そう、俺の本当のご褒美は美味い飯なんかじゃなくて、スザクのキスと一瞬の『恋人』としての優越だ。 「お前って残酷な」 「モテる男もツラいんだぜ」 そして俺はまたスザクのニヤリに惑わされる。 いつか落としてやる。 自分への誓いを新たにして、ハンバーグを頬張った。       -END-
/341ページ

最初のコメントを投稿しよう!

199人が本棚に入れています
本棚に追加