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「アクロ?どうした。冷めるぞ」
まったく、高校時代は成績優秀、眉目秀麗で『王子』なんて呼ばれてたのに。
いつからこんなに女ったらしになったんだ。
俺は呆れと切なさとが入り交じった不思議な心地で、タバスコに手を伸ばすスザクを見つめる。
「おい、それは旨いのか?」
タバスコのせいで真っ赤に染まったハンバーグはどう見ても旨そうには見えない。
「まぁまぁ?」
この、偏食家が。
スザクは残酷だ。
俺に。この俺に、恋人の『フリ』をさせるのだから。
いくら、俺がゲイでスザクを好きだってことを知らないとはいえ。
まぁ、快諾してしまう俺に問題があるのはわかる。
だけど、しょうがないじゃないか。
目の前に餌をちらつかせられたら、腹を減らした俺は飛び付いてしまう。
そう、俺の本当のご褒美は美味い飯なんかじゃなくて、スザクのキスと一瞬の『恋人』としての優越だ。
「お前って残酷な」
「モテる男もツラいんだぜ」
そして俺はまたスザクのニヤリに惑わされる。
いつか落としてやる。
自分への誓いを新たにして、ハンバーグを頬張った。
-END-
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