安心感9

2/2
前へ
/393ページ
次へ
東京で別れて以降、久しぶりに仕事で顔を会わせた。 いつもと変わらない、いや、いつもより心なしか浮かれた宇治原の顔を見て、目を逸らす。 胸の中に渦巻く、どす黒い感情を知られへんように。 お前の声聞きとうて、俺、ずっと、鳴らへん携帯手放せへんかったんやで。 なにをそんなに浮かれてんねん。 そないにピンの仕事が、東京での仕事が、楽しかったんか? 「ちょっと、台本に気になるとこあるから、確認してくるわ。」 心の中で毒づきながら、用事がある振りをして楽屋を後にする。 不満そうな宇治原の顔が見えたが、関係あらへん。 あんなに聞きたかった宇治原の声が、あんなに見たかった宇治原の顔が……今は…、自分でも持て余す苛々を増長させる…。
/393ページ

最初のコメントを投稿しよう!

504人が本棚に入れています
本棚に追加