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宇治原を避け続る内に終わった、久しぶりの二人での収録。
俺の態度を意に介することなく、普段通りに振る舞う宇治原が、ありがたいような、腹立たしいような…。
お前にとって俺って何なん?
宇治原のことを考えるのが、しんどくてしゃあない。
今日だけは、一人、宇治原のことを考えたくなかった。
「菅、お祝いしようや。」
先輩の誘いをありがたく受け、大勢に祝ってもらう誕生日。
やのに、何でこんなに寂しいんやろ?
机の上の携帯が気になって仕方ない。
と、着信を知らせるバイブ。
必死に冷静さを装い、表示を見ると
“宇治原”
逸る気持ちを抑えて、普段通りに電話にでる。
「もしもし」
「あ、おれやけど」
「うん。」
「何してんの?」
「みんなと飲んでる」
「・・・そうなんや。」
「うん。」
「・・・今すぐ抜けられへん?」
「無理やって。俺の誕生日祝ってくれてんのに」
受話器越しに聞こえるため息。
「やからやん。今すぐ帰ってきて」
「何言うてんの?そんなんあかんって」
耳元で聞こえるため息。
俺に聞かせるためのため息なんか?
「あかんのはお前やろ。誕生日位一緒に祝わせてよ。」
「・・・お前もこっちきたらええやん。」
「そういうことや無いやろ?」
「久しぶりに連絡してきてそれはないわ。」
「お前かて俺に一回でも電話したか?」
「・・・。」
またもや聞こえてきたため息。
続けて、単調な早口。
「電話で口げんかもなんやな。分かったわ。楽しんできて。もう帰るわ。」
「ちょっ・・・」
返事も聞かずに切られる電話。
なんなん?あの電話の切り方?
もう帰るって、お前今どこにおるん?
頭の中が、疑問と苛立ちで一杯になり、居ても立っても居られへん。
あかん。直接会って話さな。
「みんな祝ってくれてほんまにありがとう。すっごいありがたいんやけど、ちょっとお腹痛くて・・・先に帰らしてもらいます。ほんま、すんません。」
みんなの反応も見ずに、店を後にした。
夜風が冷たい秋の風に変わっとる。
人肌の恋しい季節、ほんまなら、あいつと一緒におりたいのに、なんでこんなことになってん。
「はぁー。」
やっと見つけたタクシーを止め、宇治原の部屋を目指す。
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