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「なんで誕生日くらい俺に空けてくれへんの?・・・お前の部屋の前で愕然としたわ。」
俺も腹がたってるけど、がんがんと責めてくる宇治原の猛勢に、なぜか言い訳めいた口調になってまう。
「・・・お前忙しそうやったし。」
「それはお互い様やんけ。なんで、みんなと飲みに行く前に一言、連絡くれへんの?」
「・・・お前、俺のオカンか」
威勢を増して責めてくる宇治原に子どもみたいな切り返しをしてもうた。
「ちゃうよ。俺はお前の恋人や。」
論点のずれた俺の答えを諭さないところで、“宇治原の頭にも血が上ってんなぁ。”と思う一方、しれっと恋人と口にする宇治原が、無性に腹立たしい。
「こんだけ放っといてよう言うわ。」
「好きで放ってた訳ちゃうやんけ」
「ここ何日かの間に、電話の一本もかけれたやろ?」
「お前が締め切り抱えてる言うてたから、遠慮したんやんか。そんなら、なんでお前は電話してけぇへんかったん?」
「それはっ…」
放っといたと責める俺を、お互い様だと宇治原が詰った途端、鬱積していた感情が爆発した。
俺の知らんフィールドで楽しそうなお前に嫉妬するからや、不安になるからやなんてよう言わん。
堰き止めた言葉の代わりに、涙が溢れ出す。
泣いとんのを悟られんように俯いて、一番聞きたい事を尋ねる。
「・・・なぁ、お前にとって俺はなんなん?」
「何を今更言うてんねん。恋人やろ?」
呆れたように答えた宇治原が、“とりあえず上がって”と、俺の腕を取るが、
「・・・いや、誕生日にこれ以上言い合いしたないし、帰るわ」
泣いとる姿を見られるんは嫌やから、宇治原に背中を向ける。
「ちょ、待てって。」
再び、俺の腕を掴んだ宇治原の手を振り払い、玄関のドアを開けようとしたところで、背後から、強く抱きしめられた。
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