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男二人が横たわるには狭すぎるソファに、あえて横たわり、菅にぴったりとくっついた。
しつこく耳を構おうとした瞬間、少しイラっとした声で、
「嫉妬してん」
菅が答えた。
「え、なにに?」
予想外の答えにサディストに徹するのも忘れ、素でつっこんでしまう。
菅は観念したように、天井を仰ぎ見ると、交差させた両腕で顔を被い、
「俺の知らんフィールドで交友関係築いてんのとか、お前好みのスタイリストの子に鼻の下伸ばしてんのとか。・・・自分でもくだらんって思うんやけど、俺の知らんお前の全部に、嫉妬しててん」
「うわっ、どないしよ?そんな嬉しいこと言われたら、俺、お前に聞きたかった他のこととかどうでもようなってきたわ」
落ちていく菅とは対照的にどんどんあがっていく俺。
そんな気配を察したのか、ため息混じりに、菅が呟く。
「お前、ごっつ腹立つわ。ほんまはこんなん言いたなかってん。」
両腕の間から覗く唇に軽く口付け、
「広文、機嫌なおして。顔見してぇや。」
甘くねだると、
「何浮かれてんねん」
苦笑いしながら、菅が腕を下ろす。
やっと俺の目を見てくれた菅の瞳を見つめて、
「嫉妬でもなんでも、嫌なことあったらとりあえず言うて。お前に一人で解決されんの寂しいわ。
・・・せや、俺、今日のサプライズ訪問の空振りも、めちゃくちゃ寂しかってん」
懇願し、今までの寂しさを埋めようと、菅の首の付け根に顔を埋めた。
俺の頭を優しく撫でながら、菅がぼそりと呟く。
「ん。俺、最近自分のことばっか考えてたなぁって、さっきから反省しててん。俺、お前に甘え過ぎやわ」
「甘えてくれんのは全然ええよ。ただな、俺のこともう少し考えてくれへん?」
俺の頼みに、わかったと頷いた菅が続けて言った。
「お前は俺に気ぃ使いすぎやわ。もっとストレートに伝えてくれんと、本音疑ってまうやんけ。」
あっ!
それがお前の不信の一因やってんな。
顔をあげ、目と目をあわせて
「わかった。そうするわ。」
約束する。
満足そうに笑う菅の、膨らんだ小鼻が可愛い。
「広文、セックスしよか」
誘う俺に、呆れたように笑いながら、
「ストレートの意味ちゃうって。お前最低やん。」
つっこむ菅に、
「あかんの?」
被せると、
「あかんことあらへんけど」
菅が言いよどむ。
「けど?」
「今日はもう耳は堪忍してな」
「了解」
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