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「イリエ! 何やってるんだ、速く薬草を!」
騒ぎを聞き付けて、一人の男性がやって来た。
「あっ、銀澪(ぎんれい)」
「“あっ、銀澪”じゃないだろう。薬草は!?」
彼はズボンが白、上着が灰色という東の大国独自の、チャイナ服という服を着ている。
そんな銀髪の青年・銀澪は、珍しく不機嫌そうな表情で言った。
「はい、これ」
そう言いながらイリエが鞄から取り出したのは、金色に輝く根っこみたいなものだ。
いや、これはどう見ても根っこであった。
それは透明の袋に入っており、袋には〈超ハイパー薬草〉と書かれている。
「ああ、これだ」
銀澪は氷のような蒼い瞳で、〈超ハイパー薬草〉を一別すると、イリエが出した物を受け取り颯爽(さっそう)と歩き出した。
イリエ達三人も、銀澪の後に着いて行く。
「なぜいたのに、さっさと持って来なかったんだ? こっちは、あのワカサマのわざとらしい呻き声をずっと聞いてたんだぞ。ちょっとはこっちの身にもなってみろよ。速く行かないとセレノアが泣くぜ」
いつもは無口無表情を貫くクールな彼だが、今は違った。
イライラとした口調で、足早に進む。
そんな彼を見て、三人はお互いの顔を見つめる。
(無口な銀澪が、こんなに愚痴を吐くなんて……一体“ワカサマ”ってどんな人?)
三人の目が、そう語っていた。
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