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「う~ん、僕はもうダメだ。ここで死ぬんだ~」
木によしかかった、20歳前後の男性が唸っていた。
その男性は左肩を怪我しているようで、血に塗れている。
どうやら、彼がモンスターに襲われた若様らしい。
一応銀澪が手当てしたのか、肩に包帯が巻かれていた。
その横には怯えているが、ちゃんと若様を守ようにしてペガサスのセレノアがいた。
純白の羽を出来る限り小さくさせ、体を隠すようにしている。
そして真っ白な馬のような体を遠くでも分かる程震えさせ、黒曜石のような瞳が涙で潤む程の恐がりようだ。
そんなセレノアが、イリエ等に気づいたが若様の側を離れられないので涙目の瞳をイリエに向ける。
「死にません。傷は浅いんですから」
呻く若様に、銀澪は突き放すような冷たい声色で言い放った。
彼の肩に巻かれた雑な、しかし完璧に巻かれている包帯からは、薄らにじむ位しか血は流れていない。
それどころか、血の赤色かどうかさえも分からない程薄いのだ。
「だが、血がこんなに……」
「対した事ありません。血だけですから。この薬草で直ぐに治ります」
そんな銀澪と若様の遣り取りに関わらず、イリエはセレノアの所に行った。
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