第1章~徹夜の仕事~

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 若様の治療が終わったのか、銀澪がこっちに歩いて来た。 「銀澪、どうだったの? ワカサマは」 「傷跡も残らないだろう。ただ、血が抜け過ぎて貧血気味だけどな。さっき屋敷の方へ運んでもらった」  不機嫌そうな銀澪に、エメラルドが声をかけた。  彼女の問いに、本当に珍しく表に感情を出して銀澪は答える。 「よし! それじゃ、怒鳴られに行くか。イリエ、何言われても黙ってなさいよ」  銀澪が傍にきて会話が一区切りした後、レイルは心を奮い立たせるよう少し大きめな声で言った。  そしてイリエの頭に手を置いて言い聞かせたが、力がいつも以上に入っていてイリエは痛そうに少し眉を上げる。  またレイルの顔は笑っていたが、引きつっていて逆に恐かった。  どうやらレイルが一番腹が立っているらしい。 「じゃ、セレノア。おやすみなさい」  レイルが引きつった笑みを浮かべている傍ら、エメラルドはセレノアに笑顔で挨拶をした。  まだ子供であっても、ペガサスであるセレノアは屋敷の中に入る事を許されていなかった。  イリエ達が屋敷の中で休む場合、彼女はイリエの魔法で一時的に【幻獣の森】に帰るのだ。 「あれ? そういえばアイツ(白呀)は?」 「もうとっくにどっか行ったよ」  屋敷の中に行きかけたレイルの質問に、イリエは何でもない事のように言った。  そしてイリエは両手を前にかざす。  すると、何もない空中に小さな、けどイリエより二回り大きな魔法陣が現われた。  それは五芒星をバックに、ドラゴンの翼のような絵が描かれている空中魔法陣だった!  その魔法陣は召喚した幻獣を戻すもの。  しかし、まだ未熟なイリエには小さなペガサスしか使う事の出来ないものである。  魔法陣から虹色の小さな光がでた後、セレノアはそれに向かって駆け出す。  そして魔法陣に吸い込まれるように消えていった。 「よし、いざ必陣!」  セレノアが消えていったのを見届けると、レイルは硬い表情で言い屋敷の方へ歩きだした。  イリエは不安そうに。  エメラルドは軽く微笑んでいるが、それはどこかぎこちない。  銀澪はいつもの無表情に戻っていた。  それぞれがそれぞれの表情で、歩きだす。  屋敷へ向かって。
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