序章~お使い~

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「ありがと、白呀。今の人数は一人じゃ、さすがにきつかったよ」  明るく口を開いた少女は、動き疲れた所為か先程のナイフの所為か分からないが、額についている汗を拭いながら笑っていた。 「何故こんな所を歩いている、イリエ。危険だという事を知っているだろうに」  その満面の笑顔の少女・イリエに、雪狼・白呀(はくが)はやや刺のある言葉を口にする。  が、彼の口調はイリエを心配するが故の厳しさがあった。  そして二人は歩き始め、改めて話を進めていく。 「レイル達のところに戻る途中だったの。私達はね、モンスター達におそわれている大きなお屋敷の人に雇われているの。  それでね、そこのご主人の息子さんがモンスターにおそわれてケガしちゃて、よくきく薬草があれば治るそうなんだけど今切れてて。  だから、私が急いで薬草を買いに行って今がその帰りなの」  イリエは、白呀に訳を説明した。 「あの三人はどうしたのだ。それにセレノアは一緒じゃないのか?」 「レイル達は、まだモンスターと戦ってるよ。セレノアはケガ人を守っているはず」  冷たい口調での質問に気にする事なく、イリエは笑って言う。  そして、白呀は歩みを止めた。 「なら俺が送って行こう。そのほうが速い」 「うん。ありがと、白呀!」  白呀は自分の背に乗るようイリエを促し、イリエはますます嬉しそうな笑顔で白呀の背に乗る。  そして白呀に乗ったイリエ達二人は、風のように去っていった。  その場に小さな旋風と、十人程の男達が残されたまま――。
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