いちごあめ

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「はああああぁぁぁ………」 銀時がいなくなった居間の床に、土方は一人座り込んで大きな溜め息をついた。 成人男性の家にAVの一本や二本、あったところでおかしな話では無いのだが……土方は出来るだけ銀時の前では性的なモノを連想させることはしたくなかったのだ。別に聖人君子を装いたかったわけでは無い。ただただ、銀時の心的外傷を慮ってのことだ。件の事件以来、銀時は大人の男に対し明らかに恐怖心を抱いている。一番症状が酷かった頃には、遠くにその姿を認めただけで嘔吐してしまう程だった。そして、約一年が経過しようという現在に至っても、銀時は一人でバスや電車に乗ることが出来ない。 そんな中、銀時が唯一心を開けたのが土方だったのだ。その事実は土方に優越感を与え……同時に自らの想いを無理矢理に封じ込めることとなった。あの夜、銀時のか細い身に何が起こったのか……それを知るが故に。 銀時に対する想いが、単なる保護欲では無く、性的欲求を伴うものであるという自覚が土方を必要以上に慎重にさせていた。気軽に言葉を交わしつつも、常に銀時の表情の変化を確かめていた。遠慮無く抱きついてくる幼い躯。簡単に反応しそうになる自身を抑え込むためにポケットに手を入れるのが癖になってしまう程に……気を配っていたのに。 ……今頃、銀時は一人浴槽の中、何を考えているのだろうか。 先刻の様子では、今までのような酷いパニックには陥っていないようだったが。 「あー!ったくッッ!」 取り出したCD。自分にとっては画面に大映しになった化粧の濃い女なんかよりも……。 「銀時……」
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