恋色惨劇

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呟いた武市に、怪しい男はにっこりと笑いかけ、被いた着物がはらりと落ちる。そこには―――。 真っ白い髪。 真っ白い肌。 薄暗い玄関の明かりの中、やけに白い男が佇んでいた。 作り物めいた赤い瞳がゆったりと微笑む。 「貴様ァァッッ!何でここが!?」 すかさずまた子が拳銃を構えた。銃口が正確に眉間に狙いを定める。 「あ、こら、ちょっと。落ち着きなさい」 「これが落ち着いていられるっスか?こいつ、晋助様に何をするつもりか分かったもんじゃないっスよ!?」 「考え無しの猪娘はこれだから困ります。この人を下手に帰したら、後で高杉殿からお叱りを受けるのは我々ですよ」 「そうそう、分かっているじゃない。別に悪さしにきたわけじゃないからさ……その物騒なものを閉まってくれる?……ほら、一応お土産だって持ってきたんだから」 “高杉に叱られる”という言葉が効いたか、不承不承拳銃を降ろすまた子に、そのやけに白い男は小さな包みを渡した。 しぶしぶといった風情で包みを開いたまた子の眼が驚きに見開かれる。 その手には紅葉を型取った簪が。派手すぎず、しかし繊細な細工が施されたそれは、僅かな明かりを映して煌めいて―――誰の目にも分かる――上等な一品だった。
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