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燭台の灯が揺らめく部屋。脇息にもたれかかる男の影絵が障子に映る。
「晋助……眠っているの?」
影がもう一つ。
すりよるように近づいていく。
蝋燭の灯はその柔らかそうな白い髪と丁寧に磨きこまれた白い肌を照らす。
「……………」
そっと伸ばされた指が、男の髪に触れる寸前、たった一つだけの瞳が何の前触れも無しにはっきりと開いた。
「……!…吃驚した……」
少々慌てたように手を引っ込める白髪の男。
「……これは何の趣向だ」
闇色の瞳が妖しく光る。鋭いその眼差しに怯む様子も無く、白髪の男は嫣然と笑みを浮かべた。
「ん……晋助に……逢いたくて……」
やけにはだけた胸元は、冷えきった夜気にも関わらず上気し、明らかに色を含ませた吐息が高杉の耳を擽る。
「……秋ってなんだかいやな季節じゃない?さみしくなってさ……ここまで来ちゃったんだ……」
しなだれかかるその様子は手慣れたもので。
「ね……俺を慰めておくれよ……晋助のココで……」
自ら四つん這いになり、高杉の下肢に手を伸ばそうとする。
「いいでしょう?」
真っ赤な瞳が情欲に濡れている。
「ふん……テメェが本当に欲しがってるもんはこんなもんじゃねェだろうが?」
“何?”
男はそう問いたかったに違いない。だが、その問いは声帯を震わすことは無く……代わりに絶叫が夜の闇を切り裂いた。
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