恋色惨劇

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「良かったの?」 「何が」 「俺、今度から幽霊扱いで門前払いされそうじゃない?それか―――“刺客”扱いでばっさり?」 「テメェが三下相手に殺られるたァ思えねェよ……第一、テメェなら誰の眼にも触れずに俺んとこに来れるだろうが……こんな風にな」 密やかに声を交わす影が二つ。明かり取りの小窓から射し込む月光が銀色の髪に遊ぶ。 「テロリストの幼馴染みに気を使ってるだけですぅ」 するりと着流しが肩から落ちた。薄闇の中、ぼう……と浮かび上がる白皙の肌。きめ細かな粒子が透明な美しさを醸し出す。 「幼馴染み……?そこは訂正しやがれ。でないと……」 抱き寄せた闇色の瞳に映るは紅の宝玉。光を、影を受けてくるくると変わるその色が愛しくてならない。 「でないと……?どうする気?……高杉……」 悪戯っぽい微笑に見え隠れする艶。その笑みを己の手で啼き声に変える楽しみは何物にも変えがたい。 「ククク……さあな。楽しみにしてろ……」 この男が意地を張れば張るほど高杉の楽しみはいや増すのだ。 高杉に貫かれ、最早何も分からない、本能のままに快楽を貪る銀時の姿を、“その時”にしか出てこないあの言葉―――誰にも譲れない天楽。 ―――紛い物にはどう足掻いたって近づくことすら出来ねェよ。 ……あの夜、刺客の生首を片手に現れた高杉を。 ―――こんな夜更けに、もちっとましな手土産は無いのかよ? ぶつぶつ言いながら眉一つ変えるでもなく招き入れた銀時。 ―――銀のお盆にでものっけてみる?コレ。 ―――いらねェよ。んなことするぐれェだったらテメェを喰わせろ。……気分が悪ィんだよ。口直しさせろ。 ―――俺は、テメェだったら乗っけてもいいなあ。見た目だけは合格点だもんね、晋ちゃんは。首だけならその凶暴さや絶倫さも大人しくなるだろうし。 ―――そうしたら困るのはテメェだろうが。俺以外にこの淫乱な躯を静められる奴、いんのかァ? ―――そういうこと言うのなら……行動で示してくんない? ……すっかり生首から二人の興味が失われ……恨めしそうな表情のまま、ごろりとソレが床を転がっても最早何一つ変わることはなかった―――。
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