2章:転機

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太陽が完全に上り切り、暖かな日差しが窓から差し込むとある部屋のベッドの上で、シーツに包まって健やかな寝顔を見せているのはこの物語の主人公、『シオン・シルフィース』。 しかし現在はシルフィースの名を捨て、『シオン・レイスン』と名乗っている。 今は先程の森での一件からすでに数時間経っており、現在は午前9時を過ぎたところ。 勿論オーク達を跡形も無く消し飛ばしたのは、今幸せそうに寝ている彼である。 公にはしていないが、彼は世界に3人しかいないSSSランクの1人で、『黒衣の救世主』と言う二つ名を持っている。 尤も、今は夢の世界に旅立ており暫く帰ってきそうにない。 どうやらあれから宣言通り寝直したようで、よく見ればさして広くもない部屋には彼の二つ名の象徴の黒いローブが無造作に落ちている。 「ん~理想を抱いて溺死しろ~……ムニャムニャ」 このまま無駄にページが使われていくのかと思われていたら、不意に「コンコン…」と小気味よい音が響いた。 「シオン様。朝です。起きてください」 と、澄んだ聞くだけで虜(とりこ)にされてしまうような美しい声がした。 「あと1万年と2000年~…」 が、シオンはまだ夢の中から戻って来る気配はない。 「……10秒待ちます。それまでにお起きになられないのなら強行手段をとります」 しかし当然シオンに聞こえていり訳はなく、 「アジャバ-…」 そうしている間に時は無情にも経ち、強行手段がとられた。 「……3、2、1、0――予告通り強行手段をとります。先に謝っておきます。すみません」 そう言うと「シャキン」と何かを切る音がした。 続いて部屋の扉に縦線が浮かんだかと思えばその線を境に扉が真っ二つに別れ、床に無惨にも転がった。 そこ(扉が『あった』場所)に立っていたのは ――メイドさんだった。 もちろん女の子の。
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