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「っ!!」
男はその声を聞くと大急ぎで隣の部屋に行き、ベッドの上で二人の子供を抱き、とても幸せそうな顔でその子達を見る女に話しかけた。
女の名は『レイス・シルフィース』
現当主、ドイル・シルフィースの妻である。
誰もが思わず触りたくなるような美しい金髪を腰まで伸ばし、透き通った蒼い瞳は見た者を釘づけにする。
また表情は穏やかでとても優しげな印象を受ける。
「……生まれたんだな?」
女はとても幸せそうな顔で「はい。」と、答えた。
「しかも、見て!男の子と女の子の双子よ!?」
言葉の端々からいかに女が幸せかが見て取れる。
それにつられてか、さっきまであれほど落ち着きが無かった男も表情を和らげる。
「おぉ、そうか!よくやった!これで我が家も安泰だ!」
と、実に嬉しそうである。
「私にも抱かせてくれんか?」
「えぇ!もちろん!」
そうしてまず男の子の方を受け取る。
「よし!決めたぞ。この子はシオンだ!」
次は女の子の方を、やはり嬉しそうに抱き上げる。
「この子はアリスだ!」
それを聞きレイスは
「よかったね?お父さんに名前を付けて貰えたのよ?」
と、優しく語りかけた。
心なしか子供達も嬉しそうな表情をしている。
この時彼ら4人は間違いなく幸せだっただろう。
しかし彼らはこの時知る由も無かっただろう。
この幸せが突然、本当に突然、終わりを迎えることを……。
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