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「あ、戒斗くん!!」
靴箱へ向かっていると、体操服すがたの咲(ショウ)と鉢合わせた。
「よう、咲。体育だったんだな」
「うん。今は体育祭も近いから、組体操の練習をしたりしてるんだ!」
元気いっぱいな笑顔をしながら咲は答える。
「組体操……なぁ……」
「あ、鬱な顔してる!」
去年の体育祭の事を思い出していると、咲はそう言って俺を見ながら笑った。
「なってねぇよ!!」
「うん、そうだね」
そう言いながらも咲は笑っていた。
いったいこの話のどこに笑いの種があるのか教えてもらいたいものだ……
「……ま、いつもお高い景色を拝められるお前からしたら、気が萎える元なんてないよな」
俺は咲の体をわざとらしくじっくり見ながら言う。
「それ……僕のこと“ちび”って言ってるの?」
舐めるような視線と言葉に疑問を持った咲がむっとした顔で問い掛ける。
彼はちっちゃな顔を上げ、まん丸としたぬいぐるみボタンのような茶色の目を細めさせながら俺をじっと見……いや睨んでいた。
「いや、ちびなんてそんな飾りのないものじゃなくて……そう、言うならばお前は『タイニーエンジェル』そのものだ」
俺は自信を持って身長140cmの彼にそう告げた。
「……けっきょくちびっこじゃないか!!?」
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