閉唄

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閉唄

また夜がくる。 テレビが笑ってる。 眼も耳も塞いだ僕は 誰にも気付かれなかった。   月を隠した雨雲の 闇が僕を包んでく。 きっとこんな唄も 口を塞いだ僕には歌えないだろう。   誰かを求めて伸ばした手も 何にも触れることはなく 僕の涙を受けとめた。 零れて落ちたその水は 音もたてずに消えてった。   誰もいない。 僕が僕から離れてく。 そんな危機的状況も なす術もなく過ぎていく。   夢を崩したその欠片。 この世界も壊したんだ。 きっとこんな唄も 崩れた世界に聞いてくれる人はいない。   誰かを求めて伸ばした手も 何にも触れることはなく 僕の涙を受けとめた。 零れて落ちたその水は 音もたてずに消えてった。   僕の声が届いていますか。 君は元気でいますか。 君が来るまで待ってるよ。 ずっと塞いだこの世界で。
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