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フィリップが強い口調でレオを制した。
「自分のしでかしたことにつべこべ言わないで下さい」
「…ハイ、スイマセン」
成長ついでに説教も食らってしまい、つい素直に萎縮してしまった。
ついでに凍傷一歩手前のガチガチの指もなんとか柔軟にしようと、関節を動かしてみる。
表情のないフリーザーの唯一の感情表現のような冷たい殺意は、再びこちらに向けられていた。
「さーて…で、どうするよ、相棒?チェリーのまま凍死したくなけりゃ、オナニーの時と同じくらい夢中で答えを出してくれ」
「オナ…わー!何てこと言うんですか!じ、自慰は禁じられた行為ですよ!?僕はオナ…なん、て…うわ、わあーっ!」
「……悪かったよ、チェリー・ボーイ。はしゃぐのは後にして、頼むからこいつの身も心も溶かすような情熱的なイッパツを絞り出してくれ」
今すぐにな。
冷や汗さえもつららになりそうなこの距離で、確実に仕留める方法を。
「あ、あれっ?」
「ん?どうした…」
フリーザーの冷気でレオの強気な笑顔さえ固まりそうな時に、フィリップは呑気に銃を握るレオの手を見つめていたかと思うと、突然レオの指をぺろりと舐めた。
「って、ファック!何しやがる!いくらチェリーのまま死にたくねぇからって、とち狂って俺を犯そうとか考えてんじゃねぇぞ!」
「ち、違いますよ!どうしてそういう下劣な思考…ああ、とにかく!フリーザーは銀の弾も炎も効かないのはこれのせいなんだ!」
「え?これって…」
何が?
レオがそう問いかけた時だった。
突然黒い物体が二人の目の前に飛び込んでくる。
「うわあっ!」
「くそっ、何だこいつら!?」
襲ってきたのは黒い数匹のコウモリだった。
とっさに目を庇い、がむしゃらに追い払う。
「『エンケラドス』」
そして突如として響いたのもまた、今までこの場になかった声。
するとその声が発せられた途端コウモリの攻撃もやみ、目を開くとあれほど近くにあったフリーザーの体は目の前から消えていた。
否、消えたのではなく、いつの間にか部屋の中央に広がった闇の方へと静かに歩を進めていた。
コウモリを使役し、闇色のマントをたなびかせる。
「んなっ…!?てめぇは……ッ!」
「黒魔術師・アイバーン…!!」
闇の中から顔を見せたのは、それを羽織ったひとりの男。
「出やがったな、ネクロマンサー!」
アイバーンは不気味に笑みを浮かべた。
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