8人が本棚に入れています
本棚に追加
R
まるで失った攻撃の意志を現象化するように、部屋中を囲む冷気と氷の膜もが、フリーザーの体に吸い込まれるようにみるみるうちに引いていく。
「えっ?あ、あれっ…?どうしたんでしょう」
一時といえど幸いにも絶望的な状況から免れたのは確かだというのに、フィリップは頼りなげな声で呟いた。
どうやらフリーザーが突然攻撃を中止した不可解さに、逆に不安を感じているらしい。
「さあな、よくはわかんねぇけど…」
レオは答えつつ、素早く愛銃をリロードする。
「こんな色男を目の前にしてよそ見とは、ずいぶんつれないな!クールガイ!」
そして一気に飛び出し、報復の一発をくらわせる。
ゆっくりと振り向くフリーザーに慌てて、フィリップが銃を 構えたままのレオの腕をつかみ、がくがくと揺らした。
「ちょっ…レオッ!何てことするんですか!銀の弾が効かないのはさっきのでわかったはずでしょう!?それにせっかく万事休すって時に、わざわざ気を引くようなまねするなんてっ!」
すがりつくように半泣きの顔で責めるフィリップに、レオはニヒルに笑い返す。
「悪ぃな、やっとおとせそうになってるかわいこちゃんを途中で諦めるのは得意じゃないんでね。条件反射で振り向かせたくなっちまった」
「なっ、何を馬鹿なことを…」
呆気にとられたフィリップがゆるゆるとレオの腕を離す。
レオはしばらくすかした笑みを浮かべたままでいたが、持ち上げていた口端を戻すと、途端にフィリップを睨んだ。
「馬鹿言ってんのはてめぇの方だ、フィリップ。神出鬼没の冷凍野郎、次はいつ会えるともわからねぇ。わかってんだろ、今ここで逃がすわけにはいかねぇってな!」
フリーザーを真正面に据えて、再び銃を構える。
トリガー以外、引くことを知らないレオに、及び腰でいたフィリップも意を決したのか全身を引き締ると、ぎこちなく頷いてみせた。
「さ、作戦を立てましょう。今ここでフリーザーを仕留める、作戦を」
レオの顔が一瞬だけ、自然と綻んだように微笑した。
無意識だが、弟みたいな弱虫の相棒の、ほんのちょっとの成長が喜ばしかったのだろう。
だがそれを悟られまいと、すぐにレオは大袈裟に不服を訴える。
「は?作戦?おい、だったら俺が撃つ前に言ってくれよ!そうすりゃ俺だって…」
「レ・オ!」
最初のコメントを投稿しよう!