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―――――6月、後半。
インターハイ予選、県大会。
決勝戦のPKを経て、私達は負けてしまった。
‥‥サッカーは11月の大会がまだあるから、それまで残ることができるんだけど。
私は散々迷った末に、引退することを顧問に報告した。
志望大学の勉強もしたいし、私が必要以上に残って後輩マネージャーが育たないのも、困る。
他の3年生は、残るよう言ってくれた子もいたけれど、私がそう言ったら、みんな応援してる」、そう言ってくれた。
京くんは、私に何の言葉も、くれなかったけれど。
別に私が気持ちを自覚したからと言って、何か変わる訳でもなかった。
自分でも驚くくらい、私は京くんに平然と接していた。
京くんも、私の気持ちなんて勘付くはずもなくて。
だって今更、気付いたところでどうすればいいのか。
ずっと弟みたいに接してきた男の子を、好きな男の人として扱うなんて、そんな方法、考えつかなくて。
何の進歩もできないまま、時間は過ぎてしまった。
‥‥正直、どうして自分、何もしなかったんだろう、って思う。
引退して今更、気付いてしまったのだ。
1学年差っていうのは、予想外に大きい。
廊下を歩いても、階が違うから、京くんに遭遇することはない。
学食に行っても京くんはいないし、そもそも学食を利用するのかすら知らなかった。
帰りの電車だって、帰る時間が違うから一緒になることもなくて。
部活に行けば、会えたから。
その状況に甘えて、私は何もしようとしなかった。
そのツケが今更来てしまったことを、―――正直、ひどく悩んでいる。
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