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「‥‥先輩、これ、」
「あ、はーい」
‥‥高校3年生、5月某日、新緑の季節である今日、日差しは眩しく、ひどく暑い。
Tシャツの首の部分をぱたぱたと揺らして風を送り込むけど、効果はないみたい。
少しため息を吐いた瞬間、1つ下の後輩に声をかけられた。
短い黒髪、
がっしりとした身体付き、
何を考えてるかわからない、その無表情。
だけど1年のお付き合いがある私からすれば、そんなのは特に気にならない。
軽く頷いて、彼の手の中のタオルを受けるとさっさと行ってしまった。
苦笑して、ちらりとシンプルな青いタオルを見つめる。
‥‥名前、書いておけってことかな。
多分、そういう意味なんだろう。
予測をつけて軽く頷いた。
そんな時、ふと声がかかる。
「‥‥先輩、すごいですよねー」
「んー?」
誰かと思い顔を上げれば、今年わがサッカー部に入ってきた、可愛い可愛いマネの後輩ちゃん。
元気でノリのいい彼女は、部員ともすぐに馴染めてるみたいだけど。
どうやら、先ほどの彼―――西宮京(にしみやけい)くんとは上手く行っていないらしい。
曰く、「雰囲気が怖い」だとか。
‥‥べっつに話してみると多少興味のあるなしがハッキリしてるくらい、のマイペースな奴なんだけど。
ま、顔だけ見れば厳ついのかもな、と3年と楽しそうに話してる横顔を見つめた。
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