459人が本棚に入れています
本棚に追加
「―――――何死にそうな顔、してるんですか」
後ろから聞こえた、呆れたような声音。
一瞬ビクリとした後、恐る恐る、振り返った。
そこには、気怠げに私を見つめる、京くんの瞳。
プレイ中は強い光を帯びたそれは、プレイが終わった瞬間、途端に眠そうな、気の抜けた色になる。
救いだったのは、決して嫌そうな色は浮かんでいなかったことだ。
それにホッと息を吐きながら、苦笑を浮かべた。
「‥‥何、今日早いんだね」
「俺もいっつも居残りしてるわけじゃないですから、」
興味なさそうに口にしながら、さっさと前に歩んでいく。
慌ててその大きな背中に向かって行き、小走りで横に並んだ。
ちらりと横を歩く私を見て、また視線を前に向ける。
その時、彼はポツリと零した。
「‥‥で?」
「、え?」
「何で、んな酷い顔さらして歩いてるんすか、って聞いたんですけど」
「‥‥あ‥‥」
無意識に避けた、問の答え。
それが自分であることに、彼は気付いているんだろうか?
少なくとも、私からそれを言おうとは、思ってもみなかったんだけど。
口ごもる私を、京くんはいつも通り、興味なさげに見つめて。
‥‥そして、ほんの少し意地の悪い笑みを、口元に浮かべた。
最初のコメントを投稿しよう!