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* * *
ピーッ
不意に、目の前の現実に引き戻される。
ハッとしてみれば、今は練習試合の真っ最中だった。
いけない、何を考えてるのか。
ぱし、と軽く自分の両頬を挟むように叩いて、もう一度、スコアに集中した。
相手校は、去年の県大会ベスト4だった強豪校。
やはり、強い。
前半35分が経った今、1-0で私達は負けていた。
どうやら、崩されているペースをうまく自分達の方に持って行けないらしい。
苛々と歯噛みしたくなるような攻防が、しばらく続いて。
「‥‥京、来い」
「はい!!」
ここが勝負時だと思ったのか、監督が、近くでアップしていた京くんに声をかけた。
その声にすぐさま反応し、走ってくる京くん。
その姿を横目で見ながら、私はじっと試合を見つめる。
‥‥今日は、みんなの調子が悪い。
京くんも最初のシューティングの時の調子が良くなくて、スタートにしてもらえなかった。
この交代で、何か変わるといいけど‥‥。
心配に思っている内に、ゲームが一旦止まり、交代になる。
その時、だった。
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