一章 襲来の夢

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愛里は、この相良家の家事全般を、ほぼ一人でこなしている。 海人を虜にしたこの朝食も、愛里が朝早くから作ったものだ。 家事が出来て気が利き、しかも可愛い(これは周りからの評価で、海人にはそんな風には思えないらしいが)とあれば、誰が出来る妹であるということを否定できようか。 まさに、文字通りの才色兼備だった。 しかし、何故彼女は家事までやるほどになったのか。 普通、家事は母親がやるもの。これが一般認識ではないだろうか。 なのに彼女が家事をやるのには理由があった。 実は、今この家に母親はいない。 別に亡くなったとかではない。 ただ、海外に長い間出張しているのだ。 彼等の母親は、父親が亡くなった後、家計を支える為に働きに出て、あるきっかけでやるようになったビジネスが大成功。 今では忙しく、ワシントンだの何だのを飛び回っている、絵に描いたようなキャリアウーマンだった。 そのような事情により、家事は愛里がやらなければならなくなり(海人は家事に関して非協力的だった為)、そして現在に至るのである。
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